京都市文化市民局部長 宮田さんにきく

ーなぜ清水寺にはふしぎな言い伝えがたくさんあるのですか?
古くから信仰を集める仏閣や神社には、その本尊や祭神が今まで示してきたアンビリーバブルな功徳や霊験譚が数多く伝承されています。あまたの老若男女がそれらの出来事に驚き、また感謝し信仰心を起こしたわけですが、そんな中、連日お参りする人が信仰とは直接関係のない不思議なものを仏堂や境内で発見します。中には作為的なものもあったでしょうが、「清水さんの不思議は御本尊様だけじゃなかった、すごいぞ」と語り合う信者や参拝者の姿が想像できます。その不思議が年月を経て清水寺の言い伝えになってきたと言えます。結論として「なぜたくさんあるか」はわかりません。強いて言えば、清水寺の長い歴史と、お寺の大きさからではないでしょうか。

ー清水寺のおすすめルートを教えてください。
ルートというより、日本史好きな方への特選スポットをご紹介しておきます。まず、北総門(経堂と田村堂の間の北)を抜けたところにある月照・信海歌碑です。江戸幕末期に活躍した勤王派の僧侶、月照(信海も僧侶で月照の弟)は幕府の追っ手を逃れて鹿児島湾で入水自殺したのです。傍らにはこれを悲しんだ西郷隆盛の詩碑も建ちます。帰り道には、寺ゆかりの平安時代初期の武将、坂上田村麻呂が征討した蝦夷の首領アテルイの顕彰碑があります。また、同じ道にある忠僕茶屋と舌切茶屋の由来も幕末の秘話に彩られていますよ(詳しくは茶屋入口の説明書きを)。

ーほかにも清水寺やその周辺の見どころはありますか?
本堂参拝の際は、是非とも靴を脱いで外陣に上がってください。ここの仏像群は、東寺や三十三間堂に負けないくらいの圧巻です。また他に例を見ない手の形をしたお前立(本尊のレプリカ)も必見です。奥の院からは、京都タワーを中心とした街並み展望も一興ですが,本堂屋根の起り反り(むくりそり)にも注目してください。大屋根の膨らんだ曲線と、軒や翼廊の反りとの調和が何ともいい感じです。
なお、本堂を抜けた左手に地主神社があります。本来は寺の鎮守社でしたが、今は独立した神社です。縁結びの神として恋占いの石があまりに有名ですが、本殿・拝殿・総門は重要文化財、拝殿の天井画は狩野元信、本殿前の狛犬は運慶の作と伝えられ、文化財の宝庫でもあります。


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